月の村 ルナビルへ。

飛行機から見える月が、右から左へ弧を描きながら西のかなたに消える頃、朝6:30 のパリに到着した。空港では、14 年前にP.G.C.D. が初めてロルコス社を訪れた当時の社長、グロンジェがいつも待っていてくれる。ロルコスを退社後もエージェントとして、P.G.C.D. とロルコス社の関係をとりもつ彼が、会うと真っ先に「おめでとう！」と嬉しそうに言ってくれた。

ロルコス社は、P.G.C.D. の石鹸をつくっている世界のトップクラスの石鹸メーカーで、フランス東部ロレーヌ地方のルナビル（Lunéville）にラボがある。ルナビルは、ローマ神話の月の女神への崇拝にちなんで「月の村」と名付けられた小さな町。15 世紀から伝わる銀の三日月が配された紋章が、今も大切に受け継がれている。

空港からそのまま車でパリを発ち、グロンジェとともにルナビルへ、車で5 時間の道のり。パリの街を出るとずっと田園風景が続く。道中の車窓には、緑色の地平線をどこまでも目で追える美しい自然が広がり、年に何度も訪れるたびに、季節により異なるその雄大な景色を楽しむ。夏にはひまわり、実りの季節にはぶどう、今はキャベツの青々とした緑が畑をうめつくしている。農業先進国らしいフランスの美しい風景である。

余計なものはいらない。

「本当にナチュラルなもので、人も地球も美しくしたい」その思いを形にしてくれるものが、意外にもすぐそばにあった。

それは石鹸。
8 世紀からヨーロッパでつくられ世界へ広がっていった石鹸は、ベーシックだからこそ水分量も少なく、余計なものを必要としない。そしてひとたび水に浸ければ、凝縮された成分が目覚めだし、出来たての新鮮な泡をたてれば、最高の状態でその成分が花開く。
それは、まさしく自分が望んでいたものだった。

思いを深めた私たちは、ここから世界一の石鹸づくりをスタートさせる。さまざまな人々と出会い、世界中の石鹸メーカーとトライアル＆エラーを繰り返す日々。日本、フランス、ドイツ、イタリア・・・・・日本国内はもちろん、世界各国の工場で試作品をトライした末に巡り会ったのが、ヨーロッパの一流ブランドや三つ星ホテルの石鹸を数多く手がけている